手付金を取り戻すまでの記録
手付金返還作戦
消費者センターへ相談する(契約から29日目)
インターネットで、手付金について調べていると国民生活センターのサイトで手付金が返還された例を見つける。
このまま自分で対応していても、どうしていいのかわからないので、まずは居住している市の消費者センターに電話をすることにした。
消費者センターの方に、これまでの経緯を話す。
対応してくださった方は、とても親身になって話を聞いてくれた。
消費者に民法の知識が無いことをいいことに、「とりあえずの契約ですから」と言って手付金を払い込ませるケースが多いらしい。僕が騙されて契約をしてしまった業者だけでなく、他にも似たような手口を使う業者があちらこちらにいる。
「夢がつまったマイホーム計画を台無しにするような業者が、たくさんあるのだな・・・」
と思い、悲しい気持ちになる。
消費者センターの方は、
「ひどい業者ですが、残念ながら、仮の契約書であっても、手付金を入金すると契約は成立してしまう。でも、契約書等も詳しく見てみないとちゃんとしたアドバイスはできない。電話だけでは、適切な回答も難しいので、書類一式を持って消費者センターの窓口まで来てもらえませんか。」
とのことだった。
後日、契約書等一式を持って市役所内にある消費者センターに行く。
長時間事務所にいた中での契約であったこと、手付金を振込する前に契約のキャンセルを申し出たが、「契約をして、手付金を振込しなかったら、法律違反になる。」と脅されて手付金を振込するに至ったことなどを再度お話する。
そして、持参してきた契約書や、重要事項説明書も見てもらった。
嘘をついて手付金を入金させたことで、契約の解除はできないか、と思ったが、実際に嘘を証明するのは難しいようだ。
「キャンセルを申し込んだにもかかわらず、嘘の説明を行い手付金を振込させた営業マンのやり方は好ましくない対応です。しかし、手付金を入金してしまうと、結局内容を了承して契約した、ということになってしまいます。」
との説明を受け、肩を落とした。
業者の狡猾な手口に怒りを覚える。
「この契約書は間取りが決まったら、書き直すとのことなので、焦らずゆっくり考えてみてください。間取り等が決まらないと、業者も正式な契約書を作ることも出来ませんし、すぐに手付金放棄する必要もありませんから。それから、手付金は、業者が自主的に返金する場合もありますから。」
気休めのようにもとれる説明を受けて、消費者センターを後にした。
契約内容を確認する
自宅に戻ると早速今後の対応を考えた。
「手付金は返してもらえないのか?」
という話はこれまで何度もしてきたが、
「返せません。これは法律で決まっていることです。解約の場合は、この手付金を放棄して解約となります。」
と、その度に言われてきた。
ローンをわざと不成立にしてしまえば、手付金は返還されるだろうか?とも考えたが、買主が故意にローンを不成立にした場合は、ローン特約に基づく契約解除を主張できなくなることがあるらしい。
このまま、悪徳業者にマイホームを建ててもらうか、支払った手付金200万円をあきらめるか。それしか道はないのだろうか。
一つの考えが浮かんだ。
担当営業マンは、
「この契約は、間取りが決まっていませんので、仮の契約書です。間取りが決まってから、正式な契約書を作成することになります。」
と説明した。この状態をずっと維持できないだろうか?という案だ。
契約書を確認してみると、履行の着手までは、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を買主に支払うことでこの契約を解除できるということになっている。
【履行の着手】について調べてみると、いろいろあったが、実際に建築に着手したりすることが、履行の着手にあたるものらしい。ただ、内容はすべて間取りも決まってから、正式な契約も交わしてからとなるような内容ばかりだった。
つまり、正式な契約を結ばなければ、【履行の着手】に至ることは絶対にありえない。正式な契約を取り交わすまでは「買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を買主に支払うことでこの契約を解除できる」状態が続くわけだ。
契約書を再度確認したが、いつまでに正式な契約をしなければいけない、という契約は交わしていない。いつまでもこの状態を続けることができる。消費者センターでも確認したとおり、間違いなく契約は成立している。民法にも定められているとおり、契約はお互いが順守しなければならない。これを守らない場合は、違法となるだろう。裁判にでもなれば、こちらが負けるのは間違いない。
僕は、急いで住む家を買わないといけない状態ではなかった。分譲マンションを賃貸してい住んでいるが、大家さんから出ていくように言われているわけでもない。消費税が5%から8%に上がる(この時は、まだ2014年4月からの増税は決まっていなかった)かもしれない状況だったが、焦りもなかった。もしも、個人的な理由で引越しした場合は、それが理由でローンが通らなくなる可能性はない。
売主が宅建業者である場合は、宅建業法39条2項により「履行に着手するまで」は手付解除できることとされている。